技法について-REBTの感情へのアプローチ-
感情に対してのアプローチ
人生哲学感情心理学(REBT)[以下、REBT]は、感情をターゲットにした心理技法です。
以前から論理療法と訳されてきたこともあって、認知の歪みを論理的な説得によって修正する技法であると受け取られてきました。
しかし、本質的にREBTとは、自滅的な行動を伴いその感情を感じること自体も自分を苦しめてしまうような「不健康な感情」を「健康な感情(目的を妨げず、長期的にエンジョイしていける感情)」に変えていくように自分自身で取り組んでいく技法なのです。
実際、REBTは、子どもから大人まで活用されていて、感情的な問題に対処するためには非常に有効です。症状が発現しているときにはその状態を切り抜けるのに非常に役立ちます。
1、まず不健康な感情に取り組む
REBTは自滅的な行動(例えば、課題を先延ばしする,出勤しない)に取り組む前に、それに伴う不健康な感情(例えば、うつ,不安,激怒)を健康な感情(例えば、悲しみ,懸念,苛立ち)に変化させることが重要と考える。
2、不健康な感情は自分の認知がつくり出していることを知る
REBTは他者の行動や過去の出来事といった外部の出来事が、直接、自分を苦しめる不健康な感情を起こさせるとは考えない。
外部の出来事を自分がどのように捉えるか、つまり「捉え方=認知」が不健康な感情を生み出す主因であると考える。
3、健康な考え方を身につける
REBTは、認知を知覚に基づく事実認知、推論的認知(事実に基づく推論)、評価的認知(事実認知や推論的認知に基づく自分・他者・人生に対する評価)の3種類に分類します。
そのうち、不健康な感情を生み出す認知は評価的認知であり、特に評価的認知の中でも、自分・他者・人生への絶対的な要求(イラショナル・ビリーフ)に注目する。
したがってREBTでは、認知の中でも評価的認知に注意すること、絶対的な要求を現実的で柔軟な願望に変えていくことを重視するものです。
より健康な考え方に変えるための指針として、その考え方が「論理的か,実証的か,有益か」をチェックする(論駁)。さらにその指針にそって、新しい健康な考え方を再構築し、それが自分に身につき腑に落ちるまで日常生活の中で練習する。
REBTの特徴
REBTには、セッションを行う上で以下の特徴があります。
1、セルフヘルプ
REBTは健康な思考・感情・行動の主たる責任者は自分自身であり、REBTの技法と哲学を身に付け、自らが日常生活で絶えず実践しつづけていくことを重視する。
クライエントは、自らが自らの「カウンセラー」になることを目指す。
2、構造化された技法
問題を具体的に絞り込んで把握していくためのA-B-C理論(A=出来事、B=信念[評価的認知]、C=結果[感情・行動]にわける)、技法のプロセスが標準ステップとして構造化されていることは、REBTが学習・実践の両面において取り組みやすく、誰が取り組んでもほぼ同一の効果が期待できることを意味する。
ABC理論により問題を具体化していくこと、各ステップを適切に遂行することを支援する標準ツール(例えば、セルフヘルプ・フォーム)があり、初心者は学習しやすいし、学習の早い段階から一人で取り組むことができるようになる。
3、日常生活での実践(ホームワーク)の重視
カウンセリング・セッションや授業以上に、問題を日常生活で自分自身で取り組んでいくことを、重視する。
4、ゴール
REBTのゴールは、心理的に健康なひとになることであり、13のゴールがある。
- 自己利益,
- 共同体感覚,
- 自己指向,
- 高い欲求不満耐性,
- 柔軟性,
- 不確かさの受容,
- 創造的な仕事への献身,
- 科学的思考,
- 自己受容,
- 危険を冒す,
- 長期的快楽主義,
- 現実的な努力,
- 自己惑乱に対する責任
(詳しくは、学会憲章を参照して欲しい)。
REBTでは、この13のゴールのいくつかでも達成できるように、実践に努めることを大切と考える。 このゴールの存在は、REBTには人間学(よりよい目標・生き方)が存在することを意味する。
5、心理教育(Psychological Education)の重視
REBTは、不健康な感情を自分がつくり出していること、A-B-C理論、構造化されたステップ、ホームワークの大切さ、ゴールなど、を教えていくことを重視する。さらに、REBTを教えるための教材開発を重視する。